日日是独身

30代ずぼら独女の、ゆるかったりしんどかったりする日常。

荻原浩「海馬の尻尾」

4月の1冊。

荻原浩「海馬の尻尾」
荻原さん作品は、「海の見える理髪店」「逢魔が時に会いましょう」…ときて3冊目。


以下ネタバレ含みます。



主人公は及川頼也、アル中のヤクザ。おまけに、反社会性パーソナリティ障害…いわゆるサイコパス。
酒でやらかしたり、ヤクザとはいえあまりにも「やりすぎ」な暴れ方をしたりと、問題行動が多すぎる彼は、若頭からアル中治療を命じられます。
ちょうど雲隠れしなければならない事態が起き、医療センターに入所しますが、そこでは怪しい治療プログラムと、訳ありすぎる入院仲間たちが待っていて…。


序盤は、正直読むのがきつかったです。
前読んだ2冊がほんわか系だったのもあって、意外でした。
暴力やら禁断症状やらの描写がえぐいのなんの。
ストーリーは気になるので読みすすめちゃうんですけど。


入所して、プログラムが始まってからがすっごく面白い。
女医の比企さん(この人素敵)、及川に懐くリホちゃん、
同室の辻野くんに堂上さん…と、癖は強いけれど魅力的な人がたくさん登場。


なんか、なにかが欠けた人同士が一緒に生活して、妙に仲良くなっていく展開って好きなのです。


それでも「いい話」では終わらず、ラストはだいぶ絶望的。どうなったかまでははっきり書かれていないけれど、及川さん本人が「そういうふうに生きてきたのだから仕方ない」「たっぷりしょいこんじまったツケはてめえで払わなければ」と思っている通りなのだと思います。


せっかく、改心とまではいかなくとも、いい意味で「恐怖」や「人の気持ち」がわかってきたところに…


それでも、リホちゃん親子や辻野くんにとっては、及川さんは「恩人」なんだろうな。
そういう意味では、怖いもの知らずだった頃より、彼は幸せなんでしょうかね。