日日是独身

30代ずぼら独女の、ゆるかったりしんどかったりする日常。

近藤史恵「スーツケースの半分は」

4月の1冊。
近藤史恵「スーツケースの半分は」

はじめて読む作家さん。


すごーく好きなタイプの小説でした!
爽やかで前向きなんだけれど、
説教臭くないというか。



以下ネタバレ含みます。


「青いスーツケース」を手にした人々の物語。
全9話で、いろいろな旅模様が描かれます。


フリマでスーツケースを買った女性と
その友人たちから話が回っていくのですが、
彼女らの関係性がすごくリアル。


嫌いなわけではなくて、むしろ本当に
好きな友達なんだけれど
1対1になると話が弾まなかったり、
好きでやっていることなのに堂々と言えなくて
はぐらかしてしまったり。


うん、あるある。
マウンティングとかとはまた違うんですよね。
全部をさらけ出せる間柄ばかりが
「親しい仲」ではないから。


そういう、それぞれに事情を抱えた
人々が「旅」を通して元気になったり
なにかに気づいたりする展開が
なんとも素敵です。


いちばん好きな箇所。


恋人でセッ〇スまでしていても、自慢話が多いと置き去りにする人間がいる一方、なんの見返りもなく、こうやって親切にしてくれる人がいる。
どちらを思い出にして、どちらを忘れればいいのかは明白だ。


※伏せ字は検索除けですよ、カマトトぶってるんじゃないですよ(笑)。



語り手の女性は、価値観の違いから
彼氏に結構な酷いことをされてしまうんですが、
たまたま出会った現地の女性の優しさに触れて
こう考えるわけです。
これからこの地名を聞くたび、親切な女性のことを
思い出すだろう、って。


たくましい…!



インドア派の私も、思わず
旅に出たくなるような1冊でした。